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研究案内 小児発達神経学

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乳児期の感覚過敏性と脳皮質活動との関連性

 感覚過敏は、音や光などの外部刺激に対して過敏に反応する特性で、養育者の育児困難感や子どもの問題行動に繋がります。しかし、乳児期での感覚過敏の神経基盤は解明されておらず、有効な介入や治療法は確立されていません。 そこで、乳児期の感覚過敏の神経基盤を明らかにするために、脳波を用いて触覚刺激に対する反応を検討しました。生後8ヵ月児の感覚過敏性を質問紙で評価し、片側の足底へ触覚刺激を与えたときの体性感覚野の脳皮質活動との関連を検討しました。その結果、感覚過敏性が強いほど、体性感覚反応の潜時に有意な遅延を認めました。また、片側への触覚刺激は、通常対側の脳領域に活動が生じます。しかし、本研究では感覚過敏が強いほど低周波数の脳波で左右差が小さく、両側が同時活性していました(図1)。これらの異質性の原因には、体性感覚野での抑制性ニューロンの活動低下の可能性が考えられ、今後の介入や治療への貢献が期待されます。(Kamiya C, et al. Clinical Neurophysiology, 2024, https://doi.org/10.1016/j.clinph.2024.04.015)

図1


自閉スペクトラム症児における言語関連ネットワークの白質コネクティビティーの異常

自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder: ASD)では、言語発達遅滞や言語理解能力の低下は主な合併症状として、社会的参加及び対人関係を阻害する要因となっている。脳神経回路の結合性の異常は、ASDの言語認知問題を引き起こす神経基盤であると考えられている。本研究室では、ASDの言語認知に関わる神経線維の結合的特性を明らかにするために、ASD児83名と定型発達児83名のMRI画像データを用いて、神経線維束の解析を行った。この結果、定型発達児に比べて、ASD児では左脳側頭–前頭葉の連合線維の結合性が有意に低値を示した。また、小児期のASD群の方がより顕著な構造異常を示しており、発達に伴ってその差は改善すると考えられた。さらに、これらの神経線維束の結合性の異常はASD児の自閉特性の重症度及び言語理解能力の低下と強く関係していた。 (Li M, et al. NeuroImage, 2024, 10.1016/j.neuroimage.2024.120731)


幼児期の睡眠習慣と脳機能発達における神経基盤研究

日本では、小児の就床時刻が遅く睡眠時間が短いことが指摘されており、幼児期の睡眠習慣の改善が課題となっています。今までの研究では、乳幼児期の短時間睡眠や頻回の夜間中途覚醒が、社会性や言葉の発達、後年の多動衝動性や情緒障害と関連することが指摘されています。しかし、幼児期早期の睡眠不良が問題行動や認知機能に影響していることを示す神経基盤については、ほとんど解明されていません。 1歳6か月から2歳の幼児を対象に、社会性発達や脳機能発達の客観的なツールである視線計測装置や脳波検査を用いて、幼児期早期の睡眠と発達の関連性を調べました。 社会性の発達の指標となる「人と幾何学模様を提示する実験」を行った際、夜間の睡眠時間のばらつきが大きい幼児期の子どもは人を見る割合が少ないことや、1日の睡眠時間が短い子どもは脳活動に変化があることを解明しました。 規則正しい睡眠が、子どもの社会性発達や認知機能を促進し、より良い社会適応を促す可能性が示唆され、子どもの発達にとって大切であることを示すエビデンスになると考えられます。Iwatani Y, et. al. Sleep Medicine 124 (2024) 531–539

    図1.子どもが保護者の膝の上に座り、電極キャップをかぶって動画を見ている時に視線と脳波を測定 する

    図2.モニターに提示された図の一例。 画像上の点は注視点を示す。左:人の顔、右:幾何学模様

    図3.総時間睡眠のばらつきと、人を見る割合の関連

    図4.総睡眠時間と右脳の中心部-頭頂部のコヒーレンス(同期性)の関連


現在取り組んでいるプロジェクト