研究成果

世界第5番、アジア初の日本人・脳―末梢組織間メチル化相関データベース公開

2023-02-27

 福井大学子どものこころの発達研究センターの西谷正太特命講師、友田明美教授らは、福井大学医学部脳神経外科・菊田健一郎教授、山口大学医学部脳神経外科・野村貞宏診療教授、米国・スタンフォード大学医学部精神科Gen Shinozaki准教授らとの国際共同研究により、世界第5番、アジア初となる日本人・脳―末梢組織間メチル化相関データベースを開発し、さらにその成果は国際誌Translational Psychiatry誌に発表しました。DNAメチル化には組織特異性があり、ヒトの精神疾患やこころのエピゲノムの解明には、脳組織が必要というジレンマがあります。しかし、脳組織は容易には得られないため、摘除腫瘍組織などを直接扱うがんエピゲノムの解明などと比べ、研究の進展にはブレイクスルーが必要となります。その一つとして、死後脳または脳外科手術(患者さんの治療・生命予後のための)で摘除した脳組織の一部を活用することで、同一人物の脳と末梢組織(血液、唾液など)のメチル化を同時測定し、それらの間の相関データベースがこれまでに4つ開発・公開されてきました。このような相関データベースを利用することで、様々な研究者が代替試料として末梢組織を使って行った個々の研究で得た結果を、脳のメチル化との関連性を調べ、議論を深めることに活用できます。これまでに英、加、米、独版のデータベースがありましたが、アジア版はありませんでした。人種による遺伝的背景の違いは、エピゲノムの違いにも影響しますので、日本人から構築された今回のデータベースは、日本だけでなく、アジア各国発の精神疾患やこころのエピゲノム研究にとって強みとなり、その精神疾患とこころのエピゲノム研究分野全体の底上げに極めて有用なツールと考えられます。

Nishitani S*, Isozaki M, Yao A, Higashino Y, Yamauchi T, Kidoguchi M, Kawajiri S, Tsunetoshi K, Neishi H, Imoto H, Arishima H, Kodera T, Fujisawa TX, Nomura S, Kikuta K, Shinozaki G, Tomoda A*, Cross-tissue correlations of genome-wide DNA methylation in Japanese live human brain and their blood, saliva, and buccal epithelial tissues, Translational Psychiatry, 2023, 13, 72.

https://www.nature.com/articles/s41398-023-02370-0