2025-04-24
要旨
自閉スペクトラム症(ASD: autism spectrum
disorder)の発症は遺伝学的基盤を有しているものの、詳細は未だ解明されていません。環境因子とDNAメチル化などの脳内でのエピジェネティックな過程がASDの発症に極めて重要です。
本研究では、ASD発症に関わるとされる縫線核背側部におけるエピジェネティック制御機構を明らかにする目的で、きわめて貴重なASD者および健常対照者の死後脳を入手し、そのDNAメチル化プロファイルを包括的に調べました。
その結果、ASD群と対照群の間にメチル化レベルが異なる領域(DMR)を同定しました(図1)。DMRは、プロモーター、遺伝子本体、遺伝子間領域など、様々なゲノム領域に分布していました。中でもセロトニンによって制御される嗅覚関連遺伝子に、高メチル化が認められました(図1)。さらにオートファジーとシナプス機能に関連する遺伝子であるRABGGTBのプロモーター関連CpGアイランドの低メチル化が、遺伝子の発現増加と相関していることが観察されました(図2)。本研究は重要なゲノム領域における広範なDNAメチル化変化を明示しています。特にSFARIデータベースに掲載されていない新規関連遺伝子としてRABGGTBが特定されたことは、ASDの病態生理における遺伝因子と環境因子の相互作用の理解を促しました。

本研究成果は、科学誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences」に令和7年4月24日(電子版)に掲載されました。
論文の出典情報:Iwata K, Nakabayashi K, Ishiwata K, Nakamura K, Kameno Y, Hata K, Matsuzaki H*. Genome-wide DNA methylation
profiles in the raphe nuclei of patients with autism spectrum disorder. 2025 Jul;79(7):415-424.
DOI : doi.org/10.1111/pcn.13830