2025-10-23
要旨
最近の研究は、酸化ストレスが自閉スペクトラム症(ASD)の病態生理学に関係していることを示しています。ASDの死後脳研究では、ASD成人の一部の脳領域で重要な抗酸化物質である還元型グルタチオン(GSH)のレベル低下が明らかですが、生体内での証拠は不足していました。
本研究では、ASD成人30名と健常対象者27名の参加のもと、プロトン磁気共鳴分光法、T1強調/T2強調比から導出したミエリンマップ、安静時機能的磁気共鳴画像法(MRI)および認知課題を使用して、ASD成人の側頭頭頂接合部(TPJ)と小脳の脳内GSHレベルが定型発達(TD)患者よりも低いかどうかを調べ、さらに脳内GSHレベル、髄鞘形成、機能的連結性および行動特性の間のASD特異的な関連パターンを検証しました。その結果、左中前頭回(MFG)の髄鞘形成と左TPJのGSHレベルとの相関に有意な群間差がありました。しかし予想に反して左TPJのGSHレベルは増大していました。次いで安静時機能的MRIの多変量パターン解析により、左MFGの全脳機能的連結パターンは左MFGの髄鞘形成との関連において群間で異なることが明らかになりました。さらに、感情認識能力と左MFGと両側後頭頭頂接合部との機能的連結との相関にも有意な群間差が見出されました。結論として、本研究結果は左TPJのGSHレベル、左MFGの髄鞘形成、左MFGの全脳機能的連結パターンおよび認知表現型の間にASD特有の関連パターンがあることを示しており、ASDにおける代償的な神経メカニズムを示唆しています。
本研究成果は、科学誌「Autism Research」令和7年10月23日(電子版)に掲載されました。

論文の出典情報:Iwabuchi T, Hirai T, Umeda N, Yogo H, Nishimiya Y, Nishigaki Y, Watanabe M, Yamasue H, Tsujii M, Tsuchiya KJ, Matsuzaki H*. Specific association patterns between brain glutathione levels, myelination, and functional connectivity in adults with autism spectrum disorder. Autism Res. 2025 Dec;18(12):2451-2462. doi: 10.1002/aur.70134.