不登校や引きこもり、いじめなど「子どものこころ」に起因する出来事が増加し、大きな社会問題となっています。その背景には、いわゆる発達障害や虐待、摂食障害、さらにはうつ病をはじめとする精神疾患の低年齢化があるともいわれ、専門家が少ない中、日本の英知を集約し、多面的な取り組みが求められています。日本の高等機関がそれぞれの特色、強味を持ち寄り、力をあわせ専門的人材育成と先端的研究の実施による新たな診断法や治療法の確立を目的に、5大学からなる連合小児発達学研究科は設立されました。
一方、「子どものこころ」の諸問題の複雑化、数の増加は日本や先進国の枠にとどまりません。実は、ひろく世界の様々な地域でも大きな社会問題となっています。そして、これら地域では、先進国にもまして、望まれる対応が十分にできていない状況があります。残念なことに、こころの分野では、治療介入も薬物治療に肩を並べ重要ですが、現在の治療介入法の多くは欧米で確立されたものであり、社会文化的に全く異なる地域では必ずしも理想的な方法とはなり得ておりません。そのため、その文化特性や生活様式に配慮した地域独自の治療介入法の確立と普及が待たれております。
以上を鑑み、本事業では連合小児発達学研究科および関連する研究センターで培ってきた研究を、さらに国内外に広く共同研究の枠組みを広げ進展させるとともに、特にアジア圏各国のリーディング機関との協働のもと、アジア圏の社会文化的な特性を反映させた治療介入法の確立とその実践を多施設協働研究として進めることとしております。
事業初年度は前連合小児発達学研究科長である大阪大学大学院谷池教授の主導のもと、アジア圏との多施設協働研究の基盤整備を進めてまいりました。事業2年目に当たります本年度におきましては、拠点たるべく先端的な研究の実施に加え、アジア圏諸機関と実際に協働研究をパイロット的に実施し、より大きな枠組みでの研究へ展開を図る段階となっております。
本事業につきまして、広く関係する方々からご意見を頂き、少しでもより良き事業の実施に努めたいと思っております。今後とも、ご指導ご鞭撻よろしくお願いいたします。