構想と基本理念
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【「科学的視点を持って子どものこころを健やかに育てる」ための教育研究拠点】

危機にさらされる子どものこころ

少子化時代を迎えたわが国の社会が直面する緊急の課題は「子どものこころを健やかに育てる」ことです。しかしながら、子どものこころはきわめて深刻な危機に晒されています。自閉スペクトラム症や注意欠如多動症等の発達障がいを持つ子どもが増加しており、その原因が追求されています。現在の日本の社会は育児にとって厳しい環境であり、養育者に対する適切な育児支援は極めて重要な課題です。こころの破綻が引き起こす青少年の重大犯罪や「いじめ」を苦にした自殺が報道されるたびに私たちは心を痛め、どこかで適切な介入ができなかったかどうか自問いたします。また、うつ病や摂食障害の低年齢化が進んでおり、臨床家は正しい知識を持ってこれらの子どもを適切に治療することが必要になっています。

新たなアプローチの創成

このような状況の中、平成19年に大阪大学と浜松医科大学とでスタートした連携融合事業「『子どものこころの発達研究センター』による教育研究事業」における成果がシーズとなって、今や『子どものこころの発達研究センター』は金沢大学、福井大学、千葉大学、弘前大学、鳥取大学を加えた7大学の事業となっております。これらの大学は、臨床医学に加え画像・疫学や生命科学を加えた医科学に、社会心理学・教育支援学と異なった背景を持つ専門家の連携により、また、7大学各々の強みを融合することによって、既存の領域を超えた新しい学際領域である『子どものこころと脳発達学』を創成し、従来は主として社会心理学の研究対象であった子どものこころの問題を医科学的見地から理解するための基盤を整備しました。

社会の要求に応える指導者層や高度専門家の育成

この新しい学際領域で作成されたカリキュラムを使用し、子どものこころを扱う専門家(臨床家、研究者)を育成するために、平成21年に「大阪大学大学院連合小児発達学研究科」が設立されました。大阪大学・浜松医科大学・金沢大学の3大学の連合から始まり、平成24年に福井大学、千葉大学が加わり、現在5大学の連合大学院になっております。当大学院では、遠隔講義システムを用いることにより、リアルタイムに遠隔地に配属されている学生に講義をおこなうことを可能としています。さらに授業終了後自動的にE-ラーニングコンテンツが作成され、出席が困難な社会人学生の学力を担保すると同時に、異分野を学ぶ学生の復習用として活用されています。

当大学院では集中講義+実習からなる演習科目を用意しておりますが、そこでは支援や研究の現場での実践について学びます。配属校以外が主宰する演習科目を選択することを積極的に勧め、遠隔講義システムを用いて定期的に開催される研究発表会で研究発表を行うことにより、指導教員のみならず、5大学の専門家からの教育・指導を仰ぐことが可能となります。

私たちの大学院で学ぶことにより、多様で科学的な視点をもつ「子どものこころ」の専門家が育成され、さらに、共に学んだ卒業生は、協働して子どもの心の問題に取り組むネットワークを自然に作り上げていきます。

最後に
私たちの課題は山積みです。発達障がいのより良い理解のための臨床研究、合理的な介入法の開発と普及、発達特性を持つ子どもが健やかに育っていくための社会への働きかけなど。

私たちは多様な問題意識をもち、真に学際的で現在の社会の要求に応えうる指導者層や高度専門家を育成することにより「子どものこころを健やかに育てる」ことに貢献いたします。

大阪大学大学院大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学
連合小児発達学研究科長  佐藤 真

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