研究成果

自閉スペクトラム症の超早期判定に寄与しうる脂質代謝物を同定

2024-06-23

要旨
 福井大学子どものこころの発達研究センターの松﨑秀夫教授、福井大学医学系部門看護学領域の平井孝治講師、浜松医科大学子どものこころの発達研究センターの土屋賢治特任教授のチームは、浜松母と子の出生コホート研究(HBC Study)」の一環として、多価不飽和脂肪酸に由来するエポキシ脂肪酸とジヒドロキシ脂肪酸の臍帯血中の濃度が出生後の子どもの自閉スペクトラム症の特性と関連するかどうかを検証しました。その結果、アラキドン酸由来ジヒドロキシ脂肪酸の一種である11,12-diHETrEが、6歳の子どもの自閉スペクトラム症特性の重症度と適応機能の双方に影響することを明らかにしました。 ジヒドロキシ脂肪酸は炎症促進性の働きを有することから、本研究の結果は、ジヒドロキシ脂肪酸が自閉スペクトラム症の発症メカニズムに関与する母体免疫活性化の本態である可能性が示唆されました。今後この知見を応用することで、出生直後に非侵襲的に採取される臍帯血を用いて、将来の子どもの自閉スペクトラム症特性の重症度や適応機能の障がいの超早期判定の実現が期待されます。 本研究成果は、2024年6月23日に国際学術専門誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences」に掲載され、国内外の80以上のニュースサイトで紹介されました。

Hirai T, Umeda N, Harada T, Okumura A, Nakayasu C, Ohto T, Tsuchiya KJ, Nishimura T, Matsuzaki H. Arachidonic acid-derived dihydroxy fatty acids in neonatal cord blood relate symptoms of autism spectrum disorders and social adaptive functioning: Hamamatsu Birth Cohort for Mothers and Children (HBC Study). Psychiatry and Clinical Neurosciences. 2024, 78(9), 546-557.

https://doi.org/10.1111/pcn.13710