研究成果

能力主義的なさりげない差別にさらされて、自閉スペクトラム症者はひっそりと孤独感を高める

2026-02

要旨
 大阪大学大学院連合小児発達学研究科(千葉校)・千葉大学子どものこころの発達教育研究センターの大島郁葉教授(責任著者)、千葉大学子どものこころの発達教育研究センターの特任研究員である管思清(筆頭著者)、大阪大学大学院連合小児発達学研究科(浜松校)の土屋賢治特任教授(常勤)、信州大学の高橋史准教授,国立障害者リハビリテーションセンター研究所の和田真室長らの共同研究チームは、自閉スペクトラム症者が日常生活で経験する「できないのは努力不足」といった能力主に基づくさりげない差別的言動(能力主義的マイクロアグレッションが、孤独感や、多数派の社会的圧力に適応するために自閉特性を隠したり、本来の自分を抑えたりする社会的カモフラージュ行動を引き起こす心理的メカニズムを明らかにしました。自閉スペクトラム症者の社会的カモフラージュは、抑うつ・不安・自殺リスクの増悪要因として知られていますが、その背景にあるマイノリティ・ストレスを引き起こすメカニズムは十分に解明されていません。
本研究は、自閉症の若者330名(18~39歳;平均30歳)を対象にオンライン調査を行い、能力主義的マイクロアグレッション、自閉スペクトラムに対する受容感、孤独感、そしてカモフラージュについて測定しました。その結果、マイクロアグレッションが多いほどカモフラージュ行動が増加し、これが長期的にはメンタルヘルスの悪化や燃え尽き症候群のリスクを高める可能性があることが明らかになりました。これらの結果は、神経多様性を尊重する包摂的な社会環境の形成に向けた新たな手がかりを示すものです。本研究は、科学技術振興機構(JST)社会技術研究開発センター(RISTEX)による「オールマイノリティプロジェクト:発達障害者をはじめとするマイノリティが社会的孤立・孤独に陥らないための、認知行動療法を用いた社会ネットワークづくり」の一環として実施されました。

出典:
Guan S, Takahashi F, Wada M, Takashina HN, Ueda M, Kawashima M, Kawaguchi Y, Kato T, Ogawa S, Tsuchiya K, Oshima F. Understanding autistic identity contingencies: The chain mediation effect of autism acceptance and loneliness in ableist microaggressions and social camouflage. Autism. 2026 Feb;30(2):466-483. doi: 10.1177/13623613251389876.Epub 2025 Dec 6. PMID: 41351454; PMCID: PMC12804416.