2020-06-17
福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授らの研究グループは,COVID-19感染症の拡大により休校措置が続き,子どもが学校に行けない状況が,養育者のストレスにどのような影響を与えるのか関して量的・質的な指標から明らかにしました。外出自粛による「巣ごもり生活」は子育てにも悪影響を及ぼし、子どもへの叱責等、感情にまかせて子どもへの態度を変えるというようなマルトリートメント(不適切な養育)がCOVID-19感染拡大前と比較し10~20%増えるという副産物をもたらしています(厚生労働省「全国児童虐待相談対応件数の動向」)。 調査は,全国的に緊急事態宣言が発令され休校措置が行われていた2020年4月29日から30日の間に実施されました。結果として,COVID-19の感染拡大が始まる前に比べて,育児ストレスを測定する質問紙の得点が有意に上昇することが示されました。さらに,育児ストレスについての自由記述のデータをテキストマイニングの手法を用いて分析し,大きく分けて「3食の食事の準備」,「一人の時間を持てなくなったこと」「子どもの勉強面や生活リズムへの不安」がこの状況におけるストレスの特徴であることが見出されました。また,本研究ではストレスの解消のための工夫についても自由記述を求め,「意識して一人の時間を作る」,「配偶者や友人との相談・協力」,「軽い運動」が有効な育児ストレス軽減法であることが示唆されました。 本研究の成果は,2020 年 6 月に国際科学雑誌「Psychiatry and Clinical Neurosciences」に掲載されました。 また,本研究はNHK福井放送局や福井新聞等のメディアで先立って報道され,社会に対する知見の発信が行われました。
〈研究支援〉 本研究は,日本学術振興会特別研究員奨励費(平岡大樹)の支援を受けて実施されました。