研究成果

自閉症スペクトラム症の言語処理にセロトニンシステムが関与することを発見

2020-09-03

金沢大学人間社会研究域の吉村優子准教授(子どものこころの発達研究センター兼任准教授)、医薬保健研究域医学系精神行動科学の菊知充教授(子どものこころの発達研究センター兼任教授)、子どものこころの発達研究センターの研究グループは,福井大学、浜松医科大学と共同研究に取り組み、自閉症スペクトラム障害の成人男性において、社会的な声や言語能力に脳の特定部位のセロトニンが関与していることを明らかにしました。研究では,自閉症スペクトラム障害の成人男性10名を対象に,知能検査を用いた言語能力の評価と2種類の「ね」という音声刺激を用いて、人の声の抑揚の変化に対する脳活動を脳磁計(magnetoencephalography;MEG)で捉えました。これらの言語に関わる指標と、PET(Positron Emission Tomography)によって得られた脳内セロトニンとの関連をそれぞれ調べました。その結果,社会的な声に対する脳内処理には左後頭部のセロトニンが有意に関わっていることを初めて示しました。さらに、知能検査で測定される言語能力には、島皮質や線条体などの大脳基底核と呼ばれる部位のセロトニンが関与していることを示しました。今後はこの研究成果をもとに、自閉症スペクトラム障害における言語コミュニケーション障害の理解の促進や客観的評価方法の開発といった展開が期待されます。本研究は英国科学誌「Scientific Reports」に掲載されました。

Markers for the central serotonin system correlate to verbal ability and paralinguistic social voice processing in autism spectrum disorder. Yoshimura Y, Kikuchi M, Saito DN, Hirosawa T, Takahashi T, Munesue T, Kosaka H, Naito N, Ouchi Y, Minabe Y. Sci Rep.2020 Sep 3;10(1):14558. doi: 10.1038/s41598-020-71254-w.