2020-12-18
福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美教授、島田浩二助教、笠羽涼子院生の研究グループは、就学前児を養育中の母親30名を対象に、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて、対乳児・対幼児発話(IDS/CDS)を産出する過程に関与する神経基盤の解明に取り組みました。IDS/CDSは対大人発話(ADS)とは異なり、ゆっくり抑揚をつけて話すといったコミュニケーションの調整とされ、子どもの発達・学習を導き支える働きがあります。実験では、参加者の母親には、子どもまたは大人に対して物の名前を伝達する発話課題に取り組んでもらい、課題遂行中の脳機能計測を行いました。その結果、対子ども条件(toward-child)では、対大人条件(toward-adult)に比べて、課題時の発話時間がより長く、腹内側前頭前野(vmPFC)などで有意に賦活低下がありました。また、vmPFCとその関連領域との間には逆相関の課題時-機能的結合が見出されました。本結果は、vmPFCがIDS/CDSの産出に関与する神経基盤として重要な役割を担い、世代間の知識伝達のためのコミュニケーションの最適化に関与することを示唆しています。本研究は、子どもへのコミュニケーションの調整の学術的な理解の深化とともに、子育てや教育などの関連分野への応用も期待されます。本研究の成果は、2020年12月18日に英国科学雑誌 Neuroscienceに掲載されました。
Ryoko Kasaba, Koji Shimada, Akemi Tomoda Neural Mechanisms of Parental Communicative Adjustments in Spoken Language. Neuroscience https://doi.org/10.1016/j.neuroscience.2020.12.002