研究成果

COVID-19パンデミックによる社会変革が育児ストレスに与える影響についてのアジア諸国における国際間比較

2021-12-21

 福井大学子どものこころの発達研究センターの倉田佐和(福井大学病院子どものこころ診療部医員・連合小児発達学研究科院生)、平岡大樹(日本学術振興会PD特別研究員)、西谷正太特命助教、友田明美教授らの研究グループは、COVID-19パンデミックによる社会変革が育児ストレスに与える影響について、南アジア(インド)、東南アジア(マレーシア)、東アジア(日本)の3か国・地域を対象に、養育者へのWebによる比較調査を行いました(感染者数世界第一位の米国も対照国として含む)。2020年8〜9月にインドでは大規模な感染拡大が発生し、米国に次いで感染者数が世界で二番目に多い国となり、また、これまで感染者数が殆どなかったマレーシアにおいても2020年9月頃から感染者数が増加し始めた時期(2020年9~11月)に、パンデミック前後の育児ストレス、パンデミックに関連した不安・恐怖、さらに小児期の逆境が育児ストレスやCOVID-19に対する不安・恐怖とどのように関連しているかを明らかにするため、小児期逆境体験の評価も行いました。その結果、アジア3カ国および米国において、パンデミックの前と比較してその後では、育児ストレスは有意に増加していました。感染状況は各国で異なっていたため、感染の深刻さに直接関係する要因だけでなく、休校措置や社会活動の制限などの社会的要因による影響が大きかったことも示唆されました。さらに、どの国においても小児期の逆境体験が、育児ストレスの増加と強く関連していました。各国の歴史、文化、思想、社会通念、価値観などの社会文化的背景の影響を考慮しても、特に小児期の逆境はその影響を超えた育児ストレス増加のリスク要因であったと考えられます。従って、今回のパンデミックのような未曾有の事態における養育者のメンタルヘルスへの介入を行う際、現在の状態の評価だけでなく、過去に遡ったリスク要因である小児期逆境体験の有無に着目するなど、早期に介入すべきハイリスクな対象をより細やかに絞るべきであるのではないかと考えられました。本研究成果は、2021年12月21日にFrontiers in Psychology誌に掲載されました。

Sawa Kurata, Daiki Hiraoka, Aida Syarinaz Ahmad Adlan, Subhashini Jayanath, Norhamizan Hamzah, Aishah Ahmad-Fauzi, Takashi X Fujisawa, Shota Nishitani, Akemi Tomoda. Influence of the COVID-19 pandemic on parenting stress across Asian countries: A cross-national study

Front. Psychol. , 21 December 2021.

尚、本研究は下記の支援により実施した成果です。 JST/RISTEX,挑戦的萌芽研究:友田明美