小児期における睡眠の問題は、成人の睡眠障害の様に昼間に眠くなるだけでなく、成長や発達に大きな影響を与えることが知られています。心身のリフレッシュメント、記憶の固定、免疫の強化等、睡眠の重要性は今さら言うまでもありませんが、特に子どもは大人に比べて長時間の深い眠りが必要であることがわかっています。睡眠時間が短い子どもでは学業成績が悪いというアメリカ合衆国の高校生のデータがありますし、また、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の子どもでは発達遅滞や学業不振、注意力低下、衝動性、攻撃性等の認知・行動面での合併症が多いとされています。このような行動面での異常が発達障害児の臨床症状に似ているということは、多くの研究者の注目を集めております。睡眠不足が長期間続いた場合、または睡眠障害が適切に診断・診療されなかった場合、子どもの神経に永続的な変化がおこる可能性もあります。私たちのグループは《小児睡眠外来》を開設して、専門的な診断・治療を行っています。また、睡眠障害を持つ広汎性発達障害児は決してまれではありませんが、その病因や病態はよくわかっていません。私たちは、発達障害児に何故、睡眠障害が多いのか、どのように対処してあげるのが発達の面から適切なのかということを研究していきたいと考えています。
- 睡眠障害を持つ子どもは就学前には 25〜40%、思春期には 40%に及ぶとされ、子どもでも睡眠の問題は決してまれではありません。とくに発達途上の子どもにおいては、睡眠障害は、発育障害、多動・衝動性、注意力の低下につながり、学業成績にも悪影響を及ぼすとの報告がなされています。そのため 我々は睡眠障害を持つ子どもを早く発見し治療するべきであると考えています。 外国でも様々な睡眠質問票が開発されていますが、添い寝など日本の睡眠習慣や子どものライフスタイルに合った質問票が必要と考え、さらに、医療関係、保健関係者が簡便に使用でき、睡眠障害を早期に発見できるようなものとして、我々は子どもの眠りの質問票および小学生版子どもの眠りの質問票を開発しました。引き続き、中学生版も開発中です。 我々は英語、中国語、タイ語、マレーシア語、インドネシア語版も開発し、海外の大学との共同研究を行い、子どもの睡眠の国際比較を行っています。
- これらの質問票は保健師さん、保育士さん、幼稚園、学校の先生、研究者どなたにも使っていただけます。下記をクリックしてダウンロードしてお使いください。
- 業 績
- 我々は質問票を用いた研究で、日本の子どもが10時以降に就床すると通園児は9時間未満の短時間睡眠になること、また在宅児では遅寝遅起きになること、子どもの睡眠は養育者のライフスタイルが大きく影響することを明らかにしました。日本の子どもの遅寝、短時間睡眠を改善するために、個々のご家庭の背景や状態に対応したアドバイスを送りスモールステップで睡眠の改善を目指す必要がありますが、そういうアドバイスをどのようにしたら養育者が気楽に受け取ってもらえるか、を考えた末、スマートホンアプリ ねんねナビ®を開発しました。一年間の実装実験では93%という驚異的な継続率が確認され、また、中途覚醒の低下、育児困難感の低下、養育者の子育ての効力感の向上などの効果を報告しています。また、睡眠習慣の改善により、社会性の伸びが良くなることも見出しています。現在、アドバイスのAI化を行い、一度に多くの方に利用いただけるようになり、国内の複数自治体でのサービスイン、脳機能の研究等、複数の研究事業を展開しています。
- 業 績
- 小児閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)は5%の子どもに見られる頻度の高い疾患です。成人では居眠りによる事故が社会問題になっていましたが、小児では居眠りは少なく、多動・衝動性、癇癪、学業の低下などの発達障害様症状をきたします。我々は小児OSAの治療前後で行動の評価を行い、治療により問題行動、特に注意の問題が有意に軽減することを報告しました。 レストレスレッグズ症候群(RLS) も小児では珍しくない睡眠疾患であることを見出しました。我々は乳幼児期発症のRLSがあること、また言葉で不快感を伝えられない児では就床時のひどい寝ぐずりが特徴であること、また、経口鉄剤が治療に有効であることを世界に先駆けて報告しました。
- 業 績
- どのような睡眠がよいのでしょうか?必要睡眠時間には個人差があります。また、西洋諸国の子どもに比べ、アジア民族は短時間睡眠であることも報告されています。しかし、「発達のため最低限必要な睡眠」がある、と我々は考えます。我々は睡眠と行動の関係を分析し、最低限介入が必要なねんねクライテリア(就床時刻が10時以降、夜間睡眠時間9時間未満、中途覚醒が平均1回/夜以上)を提唱しました。 臨床からの報告やCOVIDパンデミック下での子どもの睡眠など、様々な視点から睡眠を研究しています。 さらに、体動と睡眠の関係、体動量計や睡眠検査のゴールドスタンダードである終夜睡眠ポリグラフを用いた解析など、様々な睡眠評価の方法を研究しています。
- 業 績
- OSAでは大脳皮質が一部菲薄化しているとの報告や海馬の神経細胞が減少しているとの報告など、大脳への障害が起こっている可能性があります。我々はマウスを用いてOSAが大脳にどのように影響するのかを研究しています。
睡眠質問票の開発研究
ねんねナビ® (双方向性睡眠改善指導アプリ)の開発研究

睡眠臨床研究
